エピソード 1
ここから旅が始まる——
カンボジアの日本語ガイドのUX/CXを調査するため、取材班のK助とR助は現地へ向かうことに。しかし、旅は目的地に着いてからが本番…ではなかった。
出発前から波乱の予感?
ーーカンボジア行きの準備はどうでしたか?出発前から何か不安や波乱を感じることはありましたか?
特に不安はなかったです。空港での手続きを少しでもスムーズに進めたかったので、オンラインチェックインを事前に済ませたり、荷物の重量を家で測っておいたり、機内での時間潰しのためのエンターテイメント選びですかね。後は何かあれば、現地で対応すればええと思ってました。
僕は出発前日の夜遅くまで仕事をしていたので、とにかく撮影の機材だけは完璧に準備しておかなければという気持ちでした。後は、パスポートですかね。実を言うと、その他のことはノーマークだったり…
せやね。笑 R助くんの分も一緒にオンラインチェックインしようと事前に情報聞いたのに、空港の移動中に返信が帰ってきたもん。心のゆとりスペースが、すでにギリギリである感が、手に取るように伝わってきてん。
自分で言うのもなんですけど、僕はドジはしますけど、結構色々乗り越えれるタフさはあります!
今回の取材の旅も、色々乗り越えたもんな。まずは空港での事件。
何かありましたっけ?
とりあえず待ち合わせの時間に遅刻してきたやろ。ワシはオンラインチェックイン済みやったし、チェックイン開始直ぐにカウンターで荷物を預けれたからよかったけど、R助君…なんかえらい長いことカウンターの係の人と話してなかった?なんか怒られることでもしたんかな〜って思ってみてた。
色々質問受けてたんです。ビザの所持の有無とか、帰国用のチケットはあるのかとか、パスポートを提示しろとか。色々カバンの中から取り出すのに苦労して時間かかってました。あと、カメラ機材の安全がとても気になっていたので、その件でも色々質問してたんです。
んでチェックイン後、日本円を米ドルに両替しようと思ったら、R助君の手持ちの円が無くって、ATMを探す羽目に!しかも、早朝の出発の便で空港に来てたから、使えるATMがなかったという始末。ATMって24時間使えると思っていたから、これはワシもびっくり。っというか、この時点で、「この取材の旅は、絶対この人に振り回させるんだろうな〜」って確信した瞬間よ。笑
そんなこと思っていたんですか?!
結局、会社から渡された緊急用の米ドルを、出国する前に使用することになりました。笑 まあ、R助君に渡しただけなんやどね。それだけならよかったんだけど、その後R助君から予想外のカミングアウトが…
なんだっけかな〜?
「僕、もしかしたら痔になったかもしれない…」って。笑 もうね。この子が無事に目的地に行けるのかが不安要素だった。とりあえず空港内の薬局を一緒に探して、薬を買うのか聞いたら、「やっぱ、我慢する」って。さすがに「終発前の、ワシの優雅な早朝ワインの時間を返せ〜」って思った。笑 保安検査場に向かう頃には、ものすごい人の数になってた。
本当にもうしわけありません!!!


ーー笑 この経験を踏まえて、今後取材に行く際にどんな準備を心掛けますか?
何が必要か教えてくれる人が欲しいです!
自立しろっ!
せめてチェックリストでもいいので…
わかならいことがあっても、何を質問したらいいかわからないってケースは、確かに存在するので、真面目な話、そういうお役立ち情報があると、旅の初心者には心強いかもね。実際、痔にはならなくても、R助君のような人は少なくはないと思うし。
オンラインチェックインの存在すら知りませんでした!
そう言う声は、とても勉強になります。当事者じゃないとわからないことを知ることが、今回の旅の目的でもあるので、人選としては正解だったと思う。
基本的に、僕が知っておくべき情報とかをコンテンツ化すれば、何人かの人を救えると思うんです。なんか、現地に行ってから一生懸命取材頑張ろうと思っていましたが、準備段階でこんなに学びの機会があったんですね!
そう。同意しかない!
UX/CXポイント
海外旅行の経験者と初心者の事前準備の違い
経験者は、過去の実体験をもとに「次はこうしよう」と試行錯誤を重ねた結果、より快適で効率的な行動パターンを築いている。対して初心者は、そもそも何に注意すべきかも分からず、「何が分からないのか分からない」状態になりがちだ。
日本語ガイドを利用するユーザー層を考えると、旅慣れしていない人が多いのは明らか。そのため、空港でのトラブルを最小限に抑え、スムーズなスタートを切れるようにすることが、旅全体の満足度を高める重要なポイントとなる。特に初心者は、最初のつまずきがその後の不安につながりやすい。逆に、出発がスムーズなら気持ちにも余裕が生まるため、安心して旅を楽しめるだろう。
出発前の準備や空港での動線を最適化することで、ユーザーのストレスを軽減し、より良い体験へとつなげることができる!
乗り継ぎミッション、開始!
ーーさて、お二人は乗り継ぎのミッションに挑戦することになったわけですが、どうでしたか?
僕はK助さんの金魚のフン状態でした。笑
せっかくの社会勉強の場を奪ってしまったね。惜しいことをしたかな。でも、時間を気にしながら行動しないといけなかったので、勝手に仕切って進めてしまいました。一般的に、混雑時やコストを抑える目的で、リモートスタンドの場合があって、今回のようにバスでターミナルに移動することもあるね。


僕一人だったら、「どこに連れて行かれるんだろう」って、きっと不安になってました。
建物に入った後も、慣れてないと勘違いしやすいルートだったかもね。人の流れが到着の列に向かっているので、ぼーっとしてたら、乗り継ぎじゃないルートに進んでしまうかも。とりあえず、「Transit」とか「Connecting Flight」とかのサインを見つけて、その方向に向かっていけば正解。


今回我々は、ベトナムのハノイ空港で乗り継ぎだったので、そこからシェムリアップ空港行きの便を電光掲示板から見つけて、該当するゲートに向かう感じですね。出発時間よりもかなり早く到着してしまうと、ゲート番号が発表されてない場合もあるんですが、我々の搭乗する便は、すでにゲート番号が割り振られていて、スムーズに乗り継ぎできました。
余裕でしたよねっ!遅めのランチになりましたが、空港でのんびりと過ごせましたし。案外楽勝でした。
国際便は、天候の影響で遅延することもありえるから、こちらが余裕を持ってスケジュールしても、乗り継ぎの時間を削られてしまう時もあるかもしれん。そういう時に走れるように、靴はスニーカーとかにしておくと安心やね。到着地が南国やと、サンダルとか選ぶ人たまにいるけど、直行便以外は気をつけた方がいいかもしれへん。
なるほど!乗り継ぎ時は、「Transit」とか「Connecting Flight」というサインを探す。時刻表からゲートの番号を探す。移動はスニーカーが吉!覚えました!
UX/CXポイント
想定外のことに戸惑わないために
乗り継ぎは限られた時間の中で的確な判断が求められる場面が多く、特に旅慣れていない人にとっては、どこで何をすればいいのか分からずに戸惑いやすい。そのため、「迷いポイント」 を事前に把握し、乗り継ぎの流れをイメージできる情報をサイトで提供することが、UX/CX向上のカギとなる。
例えば、バス移動がある空港ではその可能性を伝えたり、乗り換えルートの目印となる標識や電光掲示板の見方を具体的に案内したりすることで、不安を軽減できる。また、待ち時間の有効活用も重要なポイントだ。空港の設備やサービス情報を事前に共有すれば、時間を持て余すことなく、快適に過ごせる。
「迷いポイント」を適切に把握し、必要な情報を提供することで、想定外の出来事に戸惑うことなく、時間を有効に活用できる。
いよいよカンボジアへ…しかし?
ーー遂に目的地に到着するわけですが、何かエピソードはありますか?
入国審査に手こずりましたよね!
そうそう。出国前に空港で教えてもらったことと違う情報やったから、どの情報が正しいのか戸惑いましたね。
空港の無料Wifiに繋がる時と繋がらない時があって、なかなか手続きがスムーズにいかなかったですし。
何が起きたかと言うと、まずはビザの申請に時間を食ってしまったということ。もう一つは、入国フォーム(e-Arrival)の作成に手間がかかったということです。ビザに関しては、空港で荷物を預けるまで失念してました。日本国籍を保持している場合、ビザなしで行ける国が多いので、カンボジアもそのケースだと勝手に頭で解釈していました。まあ、必要だったとしても昨今はスマホで登録できるだろうと思ってたので、そこまで気にしてはいなかったですし。
K助さんも、案外いい加減ですね。笑
ホンマにいい加減なのは、空港のスタッフです!笑 ビザの発行に証明写真が必要だといわれたんです。「今の時代、デジタルの写真が使えないのか?」と思ったんですが、係の人が言うので、1,000円払って空港で撮影したんです。でも、カンボジアの空港に到着してビザの発行手続きしてたら、写真必要なかったんです!ワシの1,000円返して〜ってなりますよね?笑
K助さんの好きなワイン飲めますね〜
こういう経験、実は以前にもありました。私はニュージーランドの永住権を持っているのですが、昔、年末年始に日本へ一時帰国し、ニュージーランドに戻る際に空港で「日本に戻るためのチケットがないから出国できません」と言われたんです。でも実際には、永住権などの長期滞在ビザを持っている人は帰国のチケットは不要 なんですよね。その場で確認してもらうのに時間を取られてしまい、ちょっと焦る経験をしました。
空港の係員も人間なので、間違えたり知らなかったりすることもあります。だから難しい〜。
僕は事前に写真を準備していたんですが、結局使いませんでした。フォームの入力はオンラインで、現地で発行したからなのかな〜。言葉が通じてたら、聞いてたのに!それよりも、僕は空港の無料Wifiが不安定で困りました。
我々のリサーチ不足でもあるんですが、この申請。事前に通信環境の良い場所でオンライン申し込みすればよかったんですよね。まあ、到着の7日前っていう期限付きですけど。
こういう場面は、旅行者しか経験しないですよね。現地のガイドさんには体験できないこと。WEBサイトでツアーを申し込みしているときに、こういう情報も一緒にみることができたらよかったな〜って思います。
R助君、とても良い着眼点です!我々の失敗を、今後サイトを見てくれる人のためにやくだてていきましょう!
はいっ!まあ、色々ドタバタはありましたが、申請完了後のQRコードを保持していれば、本当に入国審査はあっという間だったと思います。便利な世の中ですね〜

UX/CXポイント
事前情報と現場対応のギャップ
出国前に空港のスタッフから得た情報と、現地での対応に食い違いがあると、余計な手間やコストがかかるだけでなく、旅行者の混乱や不安を招く。また、デジタル化に不慣れな人は、自国でさえ対応に苦労するのに、日本語の通じない国でスムーズに解決できるはずがない。
さらに、この入国審査を終えた先には、今回のクライアント(コサルさん)との初対面が待っている。どんなに素敵な人であっても、長時間のフライトで肉体的に疲れ、入国手続きで精神的にも消耗していれば、せっかくの「はじめまして」の瞬間が残念なものになりかねない。お互いが気持ちよく挨拶を交わせることが理想であり、そのためにも入国時のストレスを最小限に抑える工夫が求められる。
刻々と変化するデジタル化した入国審査のプロセスに対応するため、最新の正確な情報提供が不可欠。
ガイド登場!第一印象は?
ーー皆さん、カンボジア到着後のコサルさん(ガイド)との初対面はどうでしたか?
長いフライトの上、乗り継ぎもあったし、入国審査で時間がかかったりと、ちょっと疲れていたんですよ。でも、コサルさんが笑顔で迎えてくれて、すごくホッとしました。
結局、コサルさんをかなり待たせた結果になってもうたよね。申し訳ない気持ちでいっぱいだったんやけど、遅れた到着を全くネガティブに捉えず笑顔で迎えてくれたことが、最初にとても安心感を与えてくれました。やっぱり、到着してすぐにこういう配慮があると、リラックスできるんですよね。

ーーその後、ホテルまでの移動はどうでしたか?長時間のフライト後に移動の快適さって大事ですよね。
確かに、長時間のフライトや入国審査を終えての移動は、疲れているので特に重要です。車の中が涼しくて清潔だったので、すごく快適でした。冷たい水を提供してくれる心配りもありがたかったですね。こういう細かい気遣いって、旅をより快適にしてくれます。コサルさん自体、「えっ?日本人?」って思わせる配慮が今回の旅で何度もありましたし。
僕も同じく、車内が清潔で涼しくて、正直ホッとしましたね。日本人として旅行に来ていると、サービスの細かい部分が気になるんですよね。カンボジアは暑いので、冷たい水をいただけるのは本当に嬉しいポイントです。疲れている体をリフレッシュできるし、移動中にリラックスできる空間を提供してくれると、次の予定にも前向きに臨めます。


確かに!文化や習慣の違いを越えて、相手の立場になって物事を捉えられるスキルは、今の時代にあたり前に浸透しつつありますね。「Empathy(共感力)」って、我々の業界では耳にタコができるほど聞くワードですし、それができるようにトレーニングされるわけですけど、コサルさん自然にできてますからね。本当に心から日本を愛してくれてるんだと思う。
僕は、ホテルに向かう途中。テンション盛り上がってましたよ!
UX/CXポイント
初対面時に求められるニーズ
長時間のフライトや入国審査で疲れ切った旅行者にとって、到着後のガイドの対応は非常に重要です。最初に出迎えてくれるガイドの笑顔や、フライトの遅れや入国審査の時間に対してネガティブな姿勢を見せないことが、旅行者に安心感を与えます。こうした配慮は、疲れた心と体をリラックスさせ、その後の旅行の体験にも良い影響を与える要素となります。
日本では当たり前のサービスが海外では一般的でないことが多いですが、日本人観光客をターゲットにしたこのサービスは、日本のおもてなし文化を理解することが求められ、そのスタンダードを維持することが重要です。日本の文化に慣れていない外国人にとって、この点を理解し、実践してもらうことが非常に大切です。
日本のおもてなし文化を理解し実践することが、ポジティブな体験として記憶に残り、その後の旅のUX/CXに大きく影響する。